加味逍遥散

 

 


 

加味逍遥散の解説

 

加味逍遥散は気滞・血虚・お血による複合した病態により生じる精神的な苛立ち、上部の熱症状である、月経に付随する諸症状に用いる漢方薬です。女性の三大処方としても知られています。

 

陽証、虚証、熱証、裏証、気滞、気逆、血虚、お血に用いる漢方薬です。理気・補血・駆お血・清熱作用があります。

 

加味逍遥散には、逍遥散に山梔子と牡丹皮という2種類の生薬を加えたという意味が有ります。

 

他に多愁訴、自律神経失調症を改善に導く漢方薬という意味も含まれます。

 

 

 

加味逍遥散に含まれる原材料

 

  • 当帰は、セリ科トウキまたはホッカイトウキの根で通例、湯通ししたものです。精油成分リグスチリドなどを含み、血を補い、巡らせる作用が有ります。
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  • しゃく薬は、ボタン科シャクヤクの根で、モノテルペン配糖体ペオニフロリンなどを含み、補血作用があり筋痙攣を抑制します。
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  • 牡丹皮は、ボタン科ボタンの根皮で、精油成分ペオノールなどを含み、駆お血作用があり、熱を冷ます作用が有ります。
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  • 柴胡は、セリ科ミシマサイコの根で、サポニンであるサイコサポニンなどを含み、抗炎症作用や肝機能改善作用などを持ち、気を巡らせて興奮や不安を軽減させます。
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  • 山梔子はアカネ科クチナシの果実で、イリノイド配糖体ゲ二ポシドなどを含み、イライラや不眠などの精神症状を抑える効果、熱を冷ます効果が有ります。
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  • 薄荷は、シソ科ハッカの葉などを乾燥させたもので、精油成分のメンソールなどを含む、理気作用と共に鎮痛作用も有します。
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  • ふくりょうは、サルノコシカケ科マツホドの菌核で、トリテルペノイドであるパキマ酸などを含み、利水、補脾胃、鎮静などの作用が有ります。
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  • は白朮はキク科オケラまたはオオバナオケラの根茎で、精油成分のアトラクチロンなどを含む、補脾胃、利水の作用があります。
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  • 生姜は、ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもので、6-ジンケロールなどを含み、胃を温め、嘔吐を抑制し、食欲を促進します。
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  • 甘草は、マメ科ウラルカンゾウまたはスペインカンゾウの根およびストロンで、トリテルペン配糖体のグリチルリチンなどを含み、抗炎症作用、抗潰瘍作用、止痛作用などがあり、補脾胃、さらに各種生薬の作用や毒性を緩和して処方としてまとめる役割が有ります

 

 

加味逍遥散が良く使われる症状

 

  • 加味逍遥散は熱、気、血のバランス失調で起こる症状に対して処方されています。
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  • 不眠やイライラ感のぼせなどの症状がある。
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  • 肩こりや季肋部、下腹部の圧痛がある。

 

 

加味逍遥散で治る症状

 

加味逍遥散は、血虚による疲労倦怠、手足と胸中に熱感や胸苦しさがあり、身体が痛み、頭と目がくらくらして重く、動悸して頬が赤くなり、口や咽が渇いて熱が出たり寝汗があったり、食欲が低下して横になることを好み、月経不順となり、腹が張って痛み、間欠熱のあるものを治す。

 

未婚女性が貧血で、陰が虚し栄気と衛気の不調和から咳や痰がでたり、弛張熱が出て痩せ衰え、やがて結核の症状のように骨が蒸し返されるような熱感があるものを治します。

 

 

適応症状

 

適応は、冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、肩こり、易疲労感、精神不安などの精神症状や便秘症状になります。

 

 

作用症状

 

作用は、不安、不眠、突然上半身に現れる灼熱感、怒りっぽいなどの精神症状の改善ですが、苛立ちや興奮に用いる抑肝散より、お血改善作用や上部の熱症状の改善作用強いなどが特徴です。

 

 

副作用

 

副作用は、甘草含有製剤なので、低カリウム血症に注意がいります。数年間使用すると、山梔子を起因とする腸間膜静脈硬化症発症との関連が報告されています。

 

 

加味逍遥散の特徴

 

女性の場合、月経に伴う病態には血の異常をきたすことが多いという特徴があります。過多月経、不正出血などによる貧血は血虚といえます。また、月経障害自体が、お血の症状の一つと考えられます。

 

婦人科領域で頻用される漢方薬を女性の頻用方剤や婦人科三大処方と呼び、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝ふくりょう丸の3方剤がこれに該当します。加味逍遥散には、血を作る生薬にプラスして、熱を冷まし、気を巡らせる生薬が含まれます。

 

加味逍遥散は上部の熱症状や気滞、血虚、お血が併存する患者さんに用いられます。

 

 

加味逍遥散の臨死研究では、手足の冷え、のぼせ、生理不順や生理痛や頭痛、肩こり、倦怠感、不眠、神経症などを抑制することが知られています。また、そのような症状を伴う更年期障害や自律神経失調症、月経前症候群などの症状を抑制します。

 

 

 

加味逍遥散が処方された症例

 

中年女性、イライラ、顔面のほてりと下肢の冷え

 

漢方的所見

 

  • 望診: 小太り、顔色が悪い、眼にクマがある、少し落ち着きがない
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  • 問診: イライラ、 不眠、 易疲労感、 下半身の冷えと首から上のほてり、 寝汗をかく、月経周期のみだれ
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  • 舌診: 舌質はひ薄、色調やや暗赤、腫大なし、歯根なし、舌苔なし、舌下の静脈は怒張著明
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  • 脈診: 沈、小
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  • 腹診: 腹力中等度〜やや虚弱、軽度の胸脇苦満あり、心下振水音なし、腹直筋の緊張なし、臍上悸あり、小腹不仁なし、臍傍圧痛あり、小腹急結あり

 

西洋医学的診断

 

更年期障害および鉄欠乏性貧血

 

 

東洋医学的考察

 

年齢、月経周期の乱れから更年期にあると考えられます。精神的に不安定になりやすいときに、長男の受験によるストレスが加わってさらに不安が強くなってきている状態と思われます。

 

顔色が悪く、眼にクマがあるのはお血を示す所見です。下半身が冷えて上半身がホテル(上熱下寒)は気逆を示唆します。易疲労感および寝汗は気虚の所見です。舌診では、非薄は気虚または血虚を示します。色調暗赤色はお血、舌苔なしは気血両虚を疑います。

 

舌下の静脈怒張はお血の所見です。脈診では、沈は表裏では裏証を示し、小は気血両虚証の所見です。腹診では、胸脇苦満は肝の気鬱を示し柴胡剤の適応です。臍上悸、臍傍圧痛、小腹急結はいずれもお血で見られる所見です。以上により、漢方診断としては加味逍遥散証ということになります。

 

 

経過

 

加味逍遥散を1日3回常用量および鉄剤を処方したところ、2週間後にはいらいらは軽減し、あまりほてりは感じなくなり、寝つきも良くなった。