大建中湯

 

 


 

大建中湯の解説

 

大建中湯は、虚証、寒証、裏証、気虚、気滞に対する漢方薬です。温裏・散寒・補気などの作用が有ります。大建中湯の特徴は次の3点に集約できます。

 

漢方医学的には、お腹が冷えて痛み、腹部膨満感のある患者に用いる。

 

西洋医学的には、開腹手術の腸管麻痺や腸閉塞、慢性便秘などに用いる

 

薬理作用として、腸管運動促進、腸管血流増加、抗炎症作用がある。

 

大建中湯の中とは消化管のことであり、建中とはお腹の働きを立て直すという意味です。したがって、お腹の冷えに伴う消化管の機能低下と腹痛に用いる漢方薬になります。

 

同じく消化管の機能低下に用いる小建中湯に対比して、腹痛などの症状が強い時に使用することを示すために大建中湯といわれています。

 

 

大建中湯の原材料

 

大建中湯は、乾姜、人参、山椒、膠飴の4種類の生薬からなります。

 

  • 乾姜は、ショウガ科ショウガを湯通し、または蒸して乾燥したもので、6−ショーガオールなどを含み、腸管運動亢進作用、腸管血流増加作用、抗炎症作用が有ります。
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  • 人参はウコギ科オタネニンジンの根を湯通ししたもので、トリテルペノイド配糖体であるギンセノシドなどを含み、抗炎症作用、滋養強壮作用があります。
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  • 山椒は、ミカン科サンショウの成熟果皮で、辛味成分であるサンショオール、フラボノイドであるヘスぺシリンなどを含み、腸管運動亢進作用、腸管血流増加作用があります。
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  • 膠飴は、麦芽糖であり、腸管運動亢進作用、冷えによる腹痛を改善する作用が有ります。

 

 

大建中湯の適応

 

これらにより、大建中湯は全体として、お腹を温め、消化管運動を改善し、身体を元気にする作用を発揮します。

 

大建中湯を使用する患者の特徴としては、虚弱な体質で、寒がりで、気虚がみられ、腹壁は軟弱無力であり、腹部は膨満し、鼓腸、腹部の冷え、腹痛を認めます。

 

腹壁が薄い場合は、腸管の動きを触れたり、目で観察できる場合が有ります。腸管の血流や動きが悪くなり、サブイレウスのような症状を呈している患者との解釈もできます。

 

 

大建中湯の効果・効能

 

大建中湯の効果・効能として、腹部を温め、腹痛や腹部膨満感を緩和する効果が期待できます。

 

使用目標は、体力が低下し、抗病反応に乏しい虚証で四股や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満、鼓腸がある場合であり、腹壁が薄く、軟弱無力で腸の動不安を認める場合、冷えにより症状の悪化する場合、開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛、腹部膨満感を認める場合に使用されます。

 

使用される疾患としては、開腹術後の腸管麻痺や腸閉塞、慢性便秘、過敏性腸症候群、クローン病などが有ります。

 

 

大建中湯の副作用

 

投薬の注意点としては、長期服用となる場合、特に実証患者では、乾姜や山椒の熱の性質、人参や膠飴の温の性質の作用過剰によるほてりや寝汗が出る場合が有ります。

 

 

その他

 

大建中湯の薬理作用として、腸管運動促進作用、腸管血流増加作用、抗炎症作用が有ります。

 

 

 

症例

 

処方 大建中湯

 

高齢男性の腹痛、便秘

 

漢方的所見

 

  • 望診:やや痩せぎみ、元気がない、顔色やや青白い
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  • 問診:お腹が冷える、手足が冷える、風呂に入り温まると気持ちがいい、口渇はない、汗はあまりかかない
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  • 舌診:舌質は色調淡泊、膨大なし、歯痕なし、舌苔は白、湿潤、舌下の静脈は軽度怒張
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  • 診:沈、緊
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  • 腹診:腹力軟弱無力、腹壁過敏で痛がる、腸管の動きを触れる、胸脇苦満なし、心下振水音なし、腹直筋の緊張なし、腹部動悸なし、小腹不仁あり、臍周囲の冷えあり、小腹急結なし

 

 

西洋医学的診断

 

一年前の胆嚢摘出手術後から悪化した症状で、こん着性腸管通過障害になります。

 

 

東洋医学的考察

 

患者は小児期の腹膜炎による癒着が原因で腸管通過障害を反復していましたが、一年前に行った胆嚢摘出後以降は通過障害が持続するようになっています。

 

痩せ気味で元気がない、身体が冷えて、疲れやすい、風呂で温まると気持ちよいというのは、虚寒証に典型的な症状です。

 

舌診では、色調淡泊、舌苔白、湿潤は寒証、水滞に見られる所見です。舌下の静脈軽度怒張は軽度のお血を示します。

 

脈診は、沈は表裏では裏証を示し、緊は寒熱では寒証を示唆します。腹診では、腹力軟弱無力で臍周囲の冷えがあるというのは虚寒証の所見です。腹壁過敏があり腸菅の動きに伴う腹痛を認めるのは、今回の特徴です。小腹不仁は腎虚をあらわす所見です。

 

以上により、漢方診断としては大建中湯証ということになります。

 

経過

 

大建中湯を1日3回処方したところ、1週間後には便通が改善してきました。下腹部痛もしだいに減弱し、一か月後にはほとんど感じなくなりました。食欲も回復し倦怠感も改善し、2ヶ月後には腹部の冷えも改善しました。

 

その後、大建中湯の内服を中断したところ、ふたたび便秘傾向になり腹痛も感じるようになりましたので、大建中湯を再開し、現在は大建中湯1日2回で服用しています。

 

 

大建中湯について

 

大建中湯の開腹手術後に生じる麻酔性イレウスに対する予防効果についての報告が多数あります。
実臨床において多くの開腹手術後の症例に使われています。

 

  • 腸管運動促進作用
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  • 腸管血流増加作用
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  • 抗炎症作用<