八味地黄丸

 

 


 

八味地黄丸の解説

 

五臓における腎の機能を補う漢方薬を補腎薬といいます。

 

代表的な補腎薬には六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸があります。八味地黄丸は、地黄、山しゅゆ、山薬、沢しゃ、ぷくりょう、牡丹皮、桂皮、附子からなります。陰証、虚証、寒証、裏証、腎証に用いる漢方薬で,温裏、補腎作用が有ります。

 

腎は生命活動を営む根源的なエネルギーである気を蓄える役割があり、この腎に蓄えられている気を腎気といいます。腎気の働きは、ヒトの誕生、男女の成長、老化に関わります。

 

腎気は、不安、食事の不摂生、過労、不適切な生活により減少します。この腎気が減少した状態を腎虚といいます。

 

腎虚の状態になると、脱毛・白髪、下肢の冷え・だるさをはじめ多様な症状が出現します。

 

漢方医学ではこれらの多様な症状を腎虚と認識して加療する点が特徴的です。八味地黄丸は腎虚によって引き起こされるこれらの諸症状を呈する患者の処方します。

 

 

八味地黄丸の適応症状

 

八味地黄丸は陰証、虚証、寒証、裏証、気虚、血虚、水滞、腎虚に用います。疲労、倦怠感、尿量減少、頻尿、手足の冷えほてりなどがある人で、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、前立腺肥大などに適応が有ります。

 

 

八味地黄丸の効果

 

腎虚の症状の改善効果のエビデンスとして、夜間頻尿、尿意切迫感、頻尿において有意な症状改善効果が示されました。

 

 

八味地黄丸を処方した症例

 

高齢男性、腰痛、頻尿、耳鳴り

 

漢方的所見

 

  • 望診:痩せ気味、元気がない、皮膚乾燥、毛髪が細く艶が無い
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  • 問診:易疲労感、慢性腰痛、腰から下の冷え、頻尿、耳鳴り
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  • 舌診:舌質は色調淡泊、腫第なし、歯痕なし、舌苔は白色湿、舌下の静脈は怒張なし
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  • 脈診:沈、弱
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  • 腹診:腹力やや弱、胸脇苦満無し、心下振水音なし、腹直筋の緊張無し、腹部動悸なし、小腹不仁あり、臍傍圧痛なし、小腹急結なし

 

 

西洋医学的診断

 

慢性腰痛症

 

 

漢方医学的考察

 

高齢男性は新陳代謝が慢性的に低下した状態である腎虚に陥りやすいとされます。腎虚のため腎による水の代謝の維持
機構が弱まっており、排尿障害や浮腫が生じています。聴力低下や耳鳴り、皮膚の乾燥、毛髪が細くなったり艶が無くなったり抜けたりするのも腎虚で見られる所見です。

 

舌診では、舌色調淡泊は寒証あるいは血虚、舌苔白色湿は陰証を示しています。脈診では沈は表裏では裏証、弱は虚証を示唆します。腹診では、腹力やや弱はやや虚証を表します。小腹不仁は腎虚を示し腎気丸類の適応ということになります。さらに下半身優位の冷えもあることから、漢方診断としては八味地黄丸証ということになります。

 

 

経過

 

八味地黄丸を1日3回常用量で処方したところ、4週間後には腰痛は改善傾向となり、夜間の尿回数も減ってきました。
皮膚の痒みも軽減してきました。2ヶ月後、腰痛は9割方消失し、足腰の冷えも改善したため、八味地黄丸を1日2回に減量しました。3ヶ月後、ずいぶん元気になり、八味地黄丸を1日1回に減量しました。